シモン芋と糖尿病


「シモン(カイアポ)芋が糖尿病に効く」というのは、「日本で販売されている健康食品で 血糖値が下がるらしい」という噂を聞きつけた、ウィーンの教授が実際に臨床試験を行った データに基づくものです。その結果は、世界的に権威のある有名な糖尿病雑誌(Diabetes Care)に2004年2月に発表された 論文 (→日本語訳は こちら)に載っています。
61人の糖尿病の患者さんを 無作為(注1)に2つのグループに分け、一方はカイアポを 飲み、もう一方は一見にせものと分からないように作ってある偽薬を飲むようにしました。 3ヵ月後の検査では、偽薬を飲んだ人たちはヘモグロビンA1c(注2)が7.0%から7.1%と ほとんど変化しなかったのに対し、カイアポを飲んだ人たちは7.2%から6.7%に改善した のです。ちなみに、軽症糖尿病患者でHbA1c値が3カ月で0.5%下がるとのデータは、糖尿病 の経口治療薬の効果にほぼ匹敵します。またこの研究では、血圧降下作用に関しては認めら れなかったものの、コレステロール低下作用や、わずかですが減量(ダイエット)傾向も 認められています。 このように食品でありながら医薬品並みの効果があったため、大いに注目されたのです。

(注1)無作為
無作為割付試験 (ランダム化比較試験)とは、例えばある患者さんたちをサイコロで偶数がでたら 治療薬群、奇数が出たら偽薬群というふうに2つのグループに割り付けて、治療薬が本当に 有効かどうかを判定する試験のことです。

(注2)ヘモグロビンA1c
血糖値の平均値の指標で、5.8%以下が正常値です。目安としては6%=平均血糖値135、7%= 170、8%=205、9%=240というふうに1%上がる毎に血糖値が35ずつ高くなると思って下さい。

上記の臨床試験はあくまで製品化されたサプリメントで行われたものですが、原料である生芋 も同様の効果がある可能性があり、むしろ生芋のほうが以下のような効果が期待できると考え られます。
  • 加工される段階でそぎ落とされた他の有効成分(注3)の摂取が可能である。
  • 食品であることから、抵抗感なく摂取でき、毎日の献立に楽しく取りいれることができる。
  • 自分で栽培することが可能である(プランターでも可能)。
  • 栽培自体が趣味や生きがいになりうるし、さらには地域振興につながる可能性もある。

(注3) 他の有効成分とは、以下の表に示されるような、豊富なミネラルのことです。
芋(粉末100g当たり)の栄養成分比較表日本食品分析センター調べ
シモン芋 サツマ芋 ジャガイモ
エネルギー エネルギー 337 Kcal 337 Kcal 357 Kcal
蛋白質 5.6 g 3.3 g 5.6 g
炭水化物 81.3 g 78.3 g 81.2 g
糖質・繊維質 2.5 g 1.9 g 1.6 g
ミネラル カルシウム 488 mg 85 mg 24 mg
1.5 mg 1.5 mg 3.1 mg
ナトリウム 40 mg 36 mg 75 mg
カリウム 16.9 mg 1.2 mg 1.2 mg
ビタミン βカロチン 3.7 mg 0.07 mg 0 mg
ビタミンB1 0.44 mg 0.16 mg 0.05 mg
ビタミンC1 13 mg 4 mg 5 mg
ビタミンD1 0.41 mg 0 mg 0 mg
ビタミンE 3.0 mg 0 mg 0 mg
ビタミンK 1.2 mg 0 mg 0 mg


シモン芋と骨粗鬆症、肝臓病、便秘


上記の表のように特にカリウム、カルシウム、ビタミンKが極めて多量に含まれて いますが、これらのミネラルやビタミンは土壌などの栽培条件によって大きく変わる ことも報告されています。 またこれらのミネラルやビタミンは葉・茎にはさらに多量に含まれているといわれて います。
  • カリウムは血圧降下や便秘改善、利尿効果があります。実際に、シモン茶や シモン芋で便秘改善・利尿効果があったという体験談はたくさんあります。 しかし血圧降下作用に関しては上記 論文では否定的です。
  • カルシウムに骨粗鬆症予防(治療)効果があることは有名です。
  • ビタミンKには骨粗鬆症予防/治療や肝臓病改善・予防、止血効果があると言われています。実際に、 『骨粗鬆症予防にシモンイモの葉が有効』という研究結果 も報告されています(この論文は原著を確認できていませんので、 後日追記予定です)。

    一方、 『ビタミンKが肝癌を予防』という論文もあり ますが、最後の部分にも書かれてあるように、この結果をさらに大規模な集団で 確認する必要性が示されています。この情報源である論文 Role of Vitamin K2 in the Development of Hepatocellular Carcinoma in Women With Viral Cirrhosis of the Liver の研究デザインは確かに信頼できるランダム化比較試験ではありますが、第1のエンド ポイントはあくまで骨粗鬆症に関するものであり、肝臓がん予防効果は研究結果を 見てあとから付け足したものです。したがって偶然性を排除できません。それでも この予防効果は大きく、コストや副作用の少なさの面からも期待されていました。 しかしながら、その後2007年2月21日の日経産業新聞上に以下の記事が載っています。

    「がん再発抑制剤 治験第2相を中止 エーザイ効果得られず

    エーザイは国内で実施していた肝細胞がん再発抑制剤の臨床試験(治験)第二相を 中止した。これまでの試験で期待通りの効果が得られなかったという。今後、試験 結果の詳細を分析し、開発を完全に中止するかどうかを決める。
    中止したのは「E0167」(開発番号)。有効成分はビタミンK2で、エーザイは 既に骨粗しょう症薬として開発・販売している。研究の過程で肝細胞がんの再発にも 効果がある可能性が出たため、新たに治験に入っていた。早ければ2008年度にも 厚生労働省に製造販売の承認を申請する予定だった。治験結果を評価する独立機関の 効果安全性委員会から「これ以上治験を進めても有効性のデータを得られない」との 報告を受けた。」

    このネガティブな結果が論文になったのかどうかは把握していません。 この結果を信頼すると、シモン芋で摂取するよりはるかに高用量のビタミンKを含有する 医薬品のグラケー(商品名)を服用しても肝臓がんの予防効果はなかったことになり、 この目的でシモン芋を摂取することは根拠のないことかもしれません。しかしこの結果は シモン芋自体が肝臓がんに効かない、と示したものではなく、その他の肝臓病に関して の情報もまだ十分収集できていませんし、多数の肯定的な体験談を頭ごなしに否定する ものでもありません。シモン芋が肝臓病に有効かどうかに関しては、科学的根拠は不明 です。

    ※ビタミンKは、ワーファリンという血液をサラサラにする薬と相性が良くないため、 ワーファリン服用中の方は、シモン芋・シモン葉の摂取は控えた方が 良いかもしれませんので主治医にご相談ください。

この他にも血液疾患や多種多様な疾患に対する有効性を期待させる体験談の報告がありますが、 あくまで現時点では科学的根拠は不明です。


シモン芋の有効性の根拠がはっきりしている疾患や不明な疾患、否定されている疾患がありますが、食品でありながら 薬として期待されているからこそ様々な研究が進んでいると思われます。シモン芋を利用される 方自身が何を期待して利用するのかを十分考え、ご自身の目的に合った利用をお勧めします。

以上の結果を踏まえ、現在のところ私自身は、「食材」として、糖尿病や骨粗しょう症あるいはそうならないように希望されている 方にお勧めしていますし、圧倒的な体験談の多さから便秘の方にもお勧めしています。

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